後立山(長野/富山) 針ノ木岳(2820.7m)、蓮華岳(2798.7m) 2023年5月3日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 2:16 扇沢市営駐車場−−2:21 登山口−−2:33 林道入口−−2:52 残雪に乗る−−3:10 最終堰堤−−4:21 ヤマクボ沢出合−−5:28 県境稜線(標高2690m)−−5:51 針ノ木岳 6:34−−7:06 針ノ木峠−−7:58 蓮華岳 8:37−−9:02 立ち話 9:39−−9:50 針ノ木峠−−10:03 ヤマクボ沢出合−−10:26 最終堰堤−−10:35 林道−−10:46 車道−−10:56 登山口−−10:59 扇沢市営駐車場

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2023年5月3日 日帰り
天候晴後薄曇
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場扇沢駅直下の有料駐車場より下に市営無料駐車場あり。ただしハイシーズンには早朝に満車になるので注意
登山道の有無あり。ただしこの時期はスバリ岳〜針ノ木岳、針ノ木峠〜蓮華岳以外の登山道はほぼ全て残雪に覆われてルート不明
籔の有無無し
危険個所の有無ヤマクボ沢、針ノ木雪渓上部、針ノ木峠〜針ノ木岳間は雪の急斜面があり滑落注意。10本爪以上のアイゼンとピッケルが必須
山頂の展望針ノ木岳、蓮華岳とも晴れれば大展望
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コメント強風が収まり気温が上がるのを待って今年初の残雪期のアルプスへ。周囲の山を見た感じでは例年と比較して残雪は少ないが、針ノ木岳までの夏道はまだほぼ完全に雪の下で雪の急斜面の登下降、トラバースが安全にできる技量を持つハイカーのみが山頂に立てる状態。予想通りの好天に恵まれて大展望を楽しめた。朝方は志賀高原越しの奥日光男体山も見ることができた。大型連休で残雪期の通常の週末より入山者は多く5,60人くらいいたと思う


針ノ木峠から蓮華岳側に少し登った場所から見た針ノ木岳。夏道はほぼ完全に雪に埋まっていて急斜面のトラバースが必要。
針ノ木岳からの下りでは3箇所ほどバックで下った


午前2時過ぎに出発。既に満車 ゲート&登山口
登山口。テントがあるが日中も無人だった 林道分岐
橋を渡った先で最初の雪が登場 でもまた無雪区間あり
最初の堰堤手前でアイゼン装着 最終堰堤を越えて雪渓に乗る
午前4時。東の空が明るくなり始める ヤマクボ沢出合から針ノ木峠方面
ヤマクボ沢出合からヤマクボ沢方面 ヤマクボ沢にも多数のトレースあり
志賀高原から日の出 雪面が赤く染まる。最も傾斜が急な区間
日の出直後の中越地方の山々
難所を乗り切って傾斜が緩まる 最低鞍部ではなく左手を目指す
つい最近に霰が降ったようだ 県境稜線
針ノ木岳。予想通りほとんど雪は無い スバリ岳。こちらも雪は無い
雪渓を登る登山者その1 雪渓を登る登山者その2
凍結+残雪でアイゼン装着 ここが一番ヤバかった
最後の登り 針ノ木岳山頂
針ノ木岳から見た東半分の展望(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た西半分の展望(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た常念山脈、槍穂
針ノ木岳から見た裏銀座〜薬師岳〜五色ヶ原(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た立山、剱岳
針ノ木岳から見た黒部別山、坊主山、剱岳北方稜線。ウドノ頭は既に真っ黒で雪が無い
針ノ木岳から見た後立山
針ノ木岳から見た南アルプス
針ノ木岳から見た槍ヶ岳 針ノ木岳から見た乗鞍岳
針ノ木岳から見た富士山 針ノ木岳から見た燧ヶ岳
針ノ木岳から見た上州武尊と奥日光北部の山 針ノ木岳から見た男体山。日光白根周辺は横手山がブロック
針ノ木岳から見た針ノ木雪渓 針ノ木雪渓を登る人
針ノ木岳から見た長野盆地 山頂で出会った種池方面へ幕営縦走する強者
針ノ木峠に向かう いつもの場所に雪壁登場(上から見ている)。バックで下った
写真では斜度が分かりにくい 雪壁の次はトラバース
針ノ木峠で幕営したもう一人の登山者が上がってきた 長いトラバース区間
次は岩のピークを巻く 岩のピークの下りは2箇所でバックで下った
安全地帯に降り立ってから振り返る この先は安全地帯
赤線が今回のルート。手前の岩峰は巻いた方が良かったかもしれない
針ノ木峠が見えた 峠付近だけ一部で夏道が出ていた
針ノ木峠から雪渓を見下ろす 針ノ木小屋北面は屋根まで残雪に埋もれる
針ノ木峠から蓮華岳方面。最初は直登 雪渓を登る本日の先頭ハイカー
南斜面は雪が消えている 針ノ木小屋を見下ろす。すれ違ったハイカーのテントが見える
針ノ木岳を振り返る。やはり雪があると迫力が違う
アイゼンを脱ぐのが面倒で雪がある箇所を登った 稜線南側には夏道が出ているが雪の上を歩いた
標高2740m付近で雪が切れて夏道に移行(アイゼン脱ぐ) 2754m峰から蓮華岳を見る
2730m鞍部 2730m鞍部から大沢を見下ろす。まだ下まで雪がつながっている
蓮華岳西の肩。三角点のある東の肩と同標高に見える 蓮華岳東の肩(三角点=山頂)
蓮華岳から見た西半分の展望(クリックで拡大)
蓮華岳から見た東半分の展望(クリックで拡大)
蓮華岳から見た常念山脈、槍穂
蓮華岳から見た頚城山脈と北信の山々
蓮華岳から見た種池山荘。まだ雪に埋もれている 蓮華岳から見た爺ヶ岳南峰と中峰。中峰には2人いる
蓮華岳から見た爺ヶ岳南尾根の登山者。おそらく幕営の片づけ 蓮華岳から見た爺ヶ岳南尾根
蓮華岳直下で雪の上を走る雷鳥。今年初の目撃 蓮華岳から見た大下り
下山開始 スキーヤーが大沢にドロップした入口
2754m峰への登り返し 2754m峰から見た針ノ木岳
針ノ木岳直下を登るスキーヤー。この急斜面を滑り降りていった 標高2680m付近
立ち話した宇都宮の若者。明日は赤谷山とのこと。元気だ 標高2620m付近
標高2610m付近から針ノ木峠を見下ろす 急雪面でバックで下った
針ノ木峠。この時間は次々と登ってきていた 針ノ木峠から針ノ木岳方向
標高2500m付近 標高2440m付近。スキーヤーのパーティー
ヤマクボ沢出合。今日は針ノ木峠方面の方が多いようだった
標高2150m付近 標高2100m付近
標高2080m付近 標高1880m付近
標高1780m付近の夏道(秋道)入口 標高1710m付近
最終堰堤の右岸を巻く 大沢小屋。落葉した時期でないと見えない
大沢。いつかここから蓮華岳に登ってみるか 標高1650m付近の左岸のテント
標高1650m付近。最後にすれ違ったスキーヤー 上流から2つ目の堰堤
上流から3つ目の堰堤 上流から3つ目の堰堤の先で林道に乗る
林道のカーブはショートカット 最後の雪は篭川を渡る橋の上流側
篭川を渡る橋から上流を見ている 花、葉はニリンソウだが背が異常に低い。本当にニリンソウ?
ニリンソウ?の群落。どれも地を這う高さ 車道に合流
ミヤマキンバイそっくりさんはおそらくキジムシロだろう タチツボスミレの可能性が一番高そう
扇沢駅 ニリンソウ?の群落。これも地を這う低さ
ゲート 登山口のテントは詰め所ではなく登山届を書く場所らしい
扇沢駅。大型連休中で賑わっていた 市営無料駐車場到着。まだ満車


 今年の大型連休は出だしは悪天となったがその後はしばらく好天の予報。しかし今年は雪解けが早く目的の藪山はことごとく雪が消えて藪漕ぎと予想され行先選定が難航。気温が低ければ低山でもいいのだが日中に気温が上がると暑すぎて活動できない。というわけで今年はテンションが上がらすしばらく家でゴロゴロしていたが、近場の北アルプスでも強風が収まって気温が上昇して適温となる予報となったため、5/3に今年初の北アに出向くことにした。行先は悩んだが針ノ木岳とした。これは最初から最後までほぼ夏道が埋もれている可能性が高く残雪が楽しめること、ヤマクボ沢の残雪期限定ルートが使えること、時間と体力の残存量によっては蓮華岳を追加できることなど複数要因があった。

 前日夜の早い時刻に扇沢の市営無料駐車場に入って場所確保。大型連休中はまだ登山者は少ないがアルペンルートを利用する観光客は多いのであった。事実。夜中0時くらいには満車になったようで駐車場内を回遊する車が見られたし、下山時には有料駐車場も満車で里に近い「らいちょう駐車場」がマイカー規制に使われていた。天気がいいし人出が多いのも当然だろう。

 装備であるが、今回は危険個所があるので長靴ではなく登山靴、マジなピッケル、アイゼンは悩んだが過去の経験で歯が短く軽量な10本爪のアイゼンでいいだろうと判断。先週末の下界の雨が上では積雪になっていないか気になったが、ネットに上がっている記録では問題になるほど積もらなかったようなのでワカンは持たなかった。

 夏なら日の出に間に合うよう出発するが、この時期は暗闇の中をヤマクボ沢核心部を登るのはイヤなので午前2時過ぎに出発。まだ上がってくる車がいる中での出発であり、今の時期でこの時刻の出発は当然ながら私一人だ。気温は+3,4℃程度だろうか、ダウンジャケットを着て歩き出す。

 扇沢駅横のゲートから登山道へ。登山口には行事で使われるテントが設置されていて臨時の登山指導所が大型連休中は開設されるようだ。むろんこの時間は無人である。夏場は葉や草が茂った登山道はまだ丸裸で何か妙な気分だ。車道のショートカットを2箇所利用した後は車道を歩いて林道入口へ。ここもまだ草も木の葉も出ていない。

 なお、夏道を歩いても普通に登れるが、残雪期は林道から早く篭川へ下って冬ルートを使用した方が歩く距離が短くて済むのでお得である。5月いっぱいくらいは篭川沿いの林道より先は残雪に埋もれているので冬ルートとして使うのが一般的である。冬道の起点は扇沢駅横から延びる車道の標高1490mから分岐する林道で地形図にも記載されている。林道を終点まで歩いてそのまま篭川右岸沿いの雪を拾っていくつかある堰堤を高巻きすればいい。最後の堰堤は標高1680m付近であり、これを越えれば広い河原に下ることができる。いくつかある堰堤はどれも高さがあるので左右どちらかを高巻きするしかないが、冬道は右岸が基本である。左岸でも行けるが雪解けが進むと右岸の林道に乗ることができず、最後は藪漕ぎになってしまう。

 篭川にかかる林道の橋を渡ると早速大量の雪が現れるがデブリらしく、乗り越えると雪が無くなる。林道のジグザクはショートカットしたりして林道終点手前で本格的に雪が覆うようになり、固く締まって滑るのでアイゼン装着。県境稜線に達するまではアイゼンを付けたままだった。なお、篭川沿いは堰堤群を越えて河原に出るまではずっと右岸を高巻きするトレースを辿った。

 無雪期は梯子がかかって乗り越える堰堤は右岸側に雪が繋がっているので難なくクリア。雪に埋もれた平らな河原を歩きたくなるが、この後も堰堤の高巻きがあるのでスキーのトレースを辿っていく。スキーでは登り返しが面倒なので下山の場合は基本的にずっと下りのルートを滑っているので歩くのにも効率的だ。先人のツボ足のトレースもそれに従っていた。

 最後の堰堤を越えるとトレースは高巻きを終えて雪に埋もれた河原に下りる。下流では水音が聞こえる箇所もあるが流れは見えなかった。よってこれ以降は谷の中を歩きやすいところを適当に上がっていけばいい。デブリで表面が荒れた場所は歩きにくいのでできるだけ平らな場所を繋げていく。谷は広くライトの光では端まで届かないのでいつの間にか谷の端を歩いていたりして、時々ルート修正する。たまに後ろを振り返るが明かりは皆無で後続の登山者はいないようだった。

 「のど」を越えて傾斜が緩む箇所が昨年ヤマクボ沢出合と勘違いした箇所だが今回は間違えることは無し。正しいヤマクボ沢出合に到着する頃にはライトが不要な明るさになっていた。針ノ木峠方面、ヤマクボ沢方面ともしっかりと先人のトレースが付いていて、急な登りではそれがステップとして利用できそうで一安心。この時間は気温が低く雪が固く締まってアイゼンの歯の先端やピッケルのピックしか雪に刺さらない状態であり、凸凹が無い急雪面では滑落のリスクが高くて行動スピードが落ちるが、足跡があると大いに助かる。

 ヤマクボ沢の最も急な区間で日の出を迎えて雪面が赤く染まる。振り返ると太陽よりずっと北側に中越地方の山々が見えていた。写真ではフレームからはみ出して写っていなかったが浅草岳の左側には守門岳が写っていた。そして奥日光の山々の姿も。やはり夏場と違って大陸性の高気圧は空気が乾燥して透明度がいい。

 傾斜が緩んで左に進路を振って県境稜線を目指す。通常は最低鞍部に出るのだが先人の踏跡は針ノ木岳寄りに続いていたのでそれに従う。稜線に出ると案の定雪は消えて広範囲に夏道が出ているのでアイゼンを脱ぐ。針ノ木岳の登りは北斜面なのでもっと雪が残っているかと思ったがほとんど見えなかった。風は予報通り弱く西風だったが、素肌で風を受けると寒いくらいなので手袋、目出し帽、半袖の上にウィンドブレーカのいで立ちだった。

 石ころが積み重なった夏道を上がっていくとやがて凍結箇所が登場。積雪ではなく透明の氷がありこれまでの雪渓より格段に滑るのでアイゼン装着。夏道は尾根直上ではなく西側直下を巻いていて西は切れ落ちているので今回のコースで最も緊張する場面だった。もしかしたら尾根直上の岩場の方が安全に通過できたかもしれないと下山後に反省。

 危険個所を通過してもまだ雪が残っているので山頂までアイゼンを履いたまま歩いた。そして針ノ木岳山頂に到着。山頂は半分が無雪で残っているのは雪庇の残骸だろうと思われた。今年の残雪期は1000m以下の中低山ばかりで久しぶりのアルプス級で空気の薄さを感じるかと思ったらそんなことは無く、標高差も約1400mを一気に登ったが疲労はそれほどではなかった。

 無人の山頂で360度の大展望を堪能。今年はやはり残雪が少なく、剱岳北方稜線のウドノ頭は既に真っ黒で雪が付いていないように見えた。サンナビキ山も黒いし坊主山も僅かに白いのみ。八ヶ岳もほとんど雪は見えないし南アルプスも同様。高妻山も真っ黒だった。見下ろす針ノ木雪渓に見える人影は2人だけだった。山頂までまだ2時間以上かかるだろうと思われるが、意外にも針ノ木峠から針ノ木岳に上がる雪面トラバース区間に人影を発見。所要時間的には私と同じ時刻に出発しないと間に合わないので、おそらくは針ノ木峠で幕営したのだろう(実際にそうだった)。針ノ木岳からでは奥日光の主要な山が志賀高原最高峰の横手山にブロックされて見ることができず、金精山から根名草山にかけての稜線と男体山の頭だけが見えていた。尾瀬の燧ヶ岳も見えていた。

 針ノ木峠で幕営した単独男性が上がってきて少し立ち話。彼はこのまま扇沢馬蹄形縦走で種池方面へとのこと。3シーズン用シュラフで昨夜は寒かったとのことだが、私に言わせればこの時期にこの標高で3シーズンシュラフで寝る発想が無謀なような。でもこんなことをするのだからかなりのベテランなのだろう。短時間の休憩でスバリ岳方面へと下っていった。こちらは針ノ木峠へと向かう。その前に顔に日焼け止めを塗るのを忘れない。これまでは太陽を背にして登ってきたが、今度は正面に太陽がある。

 山頂を下ってすぐに残雪に乗り、このすぐ先で雪壁の下りがあるはずなのでアイゼンを装着。意外にも針ノ木峠方面から斜面をトラバースして上がってくる登山者がもう1名いた。すれ違い時に話をするとこの人も幕営で、針ノ木小屋横の雪が溶けて地面が出た場所にテントが残置してあるのが見えた。この男性は軽装で針ノ木岳往復であった。

 予想通り標高2790m付近で雪壁が登場。これは昨年もあったので驚きはしないが、昨年同様にまさに雪壁で、登りはいいが下りはピッケル併用でバックでないと無理である。高さは10m程度であろうか。縮尺の参考となる物体が写っていないので写真では大きさが分かりにくい。この雪壁とこの先の北斜面のトラバースを考慮すれば、私のようにヤマクボ沢を登って針ノ木峠に下るよりも逆回りの方が安全性は高いと思う。

 先人のトレースを頼りに雪の急斜面をトラバース。まだ雪面が固く締まっているので滑落には十分に注意する。いつものルートでは岩峰の北側を巻いているはずだが、今回のトレースは岩峰を乗り越えており、岩峰周辺の2箇所でバックで下ることになった。なお、2日後に爺ヶ岳に登った時に針ノ木岳の望遠写真を撮影したら、この岩峰の根元をトラバースするようにトレースが付けなおされていた。おそらくこちらが正解だろう。

 岩峰を下ればもう傾斜が急な危険個所は無く尾根上を下っていき、最後は雪が溶けて夏道が出た短い区間を下って針ノ木峠に到着。まだ峠は無人だが針ノ木雪渓を見下ろすと数100m下に単独男性が見えた。残念ながら私はこのまま蓮華岳に向かうので、男性が蓮華岳方向に登ってこない限りはすれ違うことは無いだろう。

 峠から蓮華岳方向の出だしは雪が付いて夏道が隠れているので、稜線直上の残雪の急斜面を登る。雪面上端で夏道が現れて南斜面へとルートを変えると雪が消えるが、またどこで雪が出てくるが予想が難しいのでアイゼンを履いたまま登っていく。しかし南斜面のうちはずっと夏道が出ていて、登山道が尾根上に移ってもほぼ夏道が出ていた。尾根上の北側には雪が残っているので、アイゼンを脱ぐのが面倒で雪の上を歩いた。これは西寄りの冷たい風を避ける意味合いもあった。

 その残雪も標高2730m付近で途切れるのでアイゼンを脱いで冷たい風に吹かれながら夏道を上がっていく。この先は平坦な場所では雪が残っているが傾斜がある場所は雪が無いのでアイゼンは不要。最終的に分かったことは蓮華岳方面は針ノ木峠付近の急な雪面を登って夏道に出ればもうアイゼン不要だということ。

 2754m峰、2750m峰を越えると左手は大沢へと続く斜面で、今の時期は篭川まで雪がつながっているのが見えた。結構な傾斜であるがここを直登して蓮華岳に至る記録を見たことがあるのでいつかやってみたいところ。ただし今回持ってきた10本爪アイゼンは軽量な分歯が短くグリップ力が低いので、あまり急な雪面では不安がある。特に下りではそれが顕著に出るので、今回の下りは素直に針ノ木峠経由にすることに決定。ちなみに鞍部から大沢へ滑り降りたスキー跡が一人分だけあった。あの傾斜を滑るのだから相当な手練れであろう。

 最後の登りで蓮華岳山頂部の西の肩(祠)に到着。冷たい風が強く写真撮影する手が凍える。ここから見る東の肩=三角点の高さはここと変わらないように見える。三角点から西の肩を見ても同じ高さに見えた。

 残雪を伝って蓮華岳東の肩=三角点=蓮華岳山頂に到着。相変わらず東尾根には明瞭な道形が見えている。おそらく爺ヶ岳南尾根並みの明瞭な踏跡ができているのだろう。山頂直下東側の雪田上を走る雷鳥を発見してすぐにデジカメを向けるが逃げ足が速く、1枚撮影しただけでハイマツの中に隠れてしまった。それでも今シーズンの初雷鳥は嬉しかった。岩陰で風を避けながら休憩したが、風さえなければ日差しがあると快適な体感温度だった。

 下山開始。西の肩から下っていくと本日最初の扇沢発の単独男性とすれ違った。2754m峰の下りでは宇都宮からやってきたという若者の男性に遭遇。これから蓮華岳に登ってから針ノ木岳にも登ってヤマクボ沢経由で下山し、明日は富山の赤谷山へ登るという何とも元気な若者であった。今の私では真似できない。もっと早い時間帯なら男体山の頭が見えていたが、この時刻だとちょっと厳しいかもしれない。まだ登りなのに30分も立ち話で引き留めてしまって申し訳なかった。この間に先にすれ違った男性が追い越していった。

 また、立ち話の最中に針ノ木岳直下のトレーをから離れた急斜面を登るスキーヤーの姿を宇都宮の男性が発見。そのまま山頂直下の急斜面を滑り降りていった。アイゼンで歩いて下るにもかなりの急斜面であり、スキーで滑るには相当な度胸と技量が必要であろう。このスキーヤーとは扇沢近くで追い付いたが、同じ長野県内ナンバーだったのでもしかしたら住まいは近所かもしれない。

 帰りは針ノ木峠直上まではノーアイゼンで歩き、雪の急斜面でアイゼン装着して最初だけバックで下って数人が休憩中の針ノ木峠へ。さすがにこの時間は人の姿があり、針ノ木岳へ登りにかかっている登山者の姿が見られた。針ノ木雪渓を登ってくる登山者は次から次へと現れて、合計で5,60人程度いたと思う。夏山シーズンより少ないが残雪期の通常の週末よりは格段に多く、さすが大型連休だ。この好天も影響しているに違いない。

 稜線から下ると風がブロックされて体感的には暑くなり、ここで麦わら帽子の登場。針ノ木雪渓上部はヤマクボ沢に引けを取らないほど急傾斜で、北向きの谷でまだ日当たりが悪く雪が締まっているので下りは滑落注意。こんな場面では今履いているアイゼンは歯が短くて不安があるので慎重に足を進める。こういう場面ではピッケルが心強い。

 ヤマクボ沢出合まで下れば傾斜が緩んで安全地帯。まだまだ下から上がって来る登山者の姿が多い。ここまですれ違ったのはスキーヤーと登山者が半々程度の割合であった。どちらも単独や2人程度の少人数パーティーが大半だが、たまに5人以上のパーティーも。「のど」を通過すると人の姿はぐっと少なくなり、秋道入口以降ではすれ違ったのは1名のスキーヤーのみであった。

 帰りも往路と同じく左岸のトレースを辿る。行きは真っ暗で大沢入口がどこなのか分からなかったので帰りに確認。下界からでは雪に覆われたなだらかな谷が奥まで続いているように見えて急斜面の区間は見えない。大沢の流れは全く見えず分厚いデブリで覆われていた。

 堰堤を巻いて林道に出るとアイゼンを脱ぐ。往路同様に林道がジグザグる箇所はショートカットして最後の雪を越えると篭川にかかる橋で、この先にはもう雪は無い。この直前にスキーを収納中のスキーヤーを追い越したが、その服装からして針ノ木岳直下の急斜面を滑っていたスキーヤーに違いなかった。私が道端の花の写真を撮影している間に追い越された。

 帰りは明るいので林道、舗装された車道の道端に咲いた春の花を探しながら歩く。林道脇にはまだ花は咲いていなかったが舗装道路脇の日当たりのいい斜面には数種の花が見られた。最初に目に付いたのはニリンソウっぽい白い花だが、その背丈はミヤマキンポウゲのように地面を這う高さしかない。通常、ニリンソウは20cm前後はあり比較的背が高いので明らかに異なると思えるのだが、花だけでなく葉っぱもニリンソウそっくりである。それにニリンソウのように群落を作っていた。ネットで色々調べたが正確なことは分からなかったが、葉の特徴からキンポウゲ科であるのは間違いない。次に見つけたのはミヤマキンバイ似の黄色い花で、葉の形状からキジムシロだろう。ミヤマキンバイもキジムシロも同族であるから似ていて当然だ。紫色の小さなスミレはタチツボスミレの可能性が高そうだが自信なし。

 ゲート横の登山口に出てテントの前に回り込むが早朝と同じく無人のままで、指導員の詰め所としてではなく登山届の記入場所として使われているようだ。ちなみにこの2日後に行った柏原新道登山口にも同じように白いテントが設置されていたが、こちらは日中に人が詰めていた。ただしその日に撤収作業中で大型連休中の臨時開設だったようだ。

 大型連休期間なので扇沢駅は大賑わい。室堂方面から帰ってきた人の姿もありザックを背負った人も。室堂周辺は針ノ木岳よりも残雪はずっと多かっただろう。今年はコロナ前の状況に戻りつつあるので外国人を含めた観光客で大賑わいだっただろう。

 扇沢駅近くの有料駐車場は既に満車で、当然ながら市営無料駐車場も満車。こちらは夜中に既に満車だったからなぁ。針ノ木岳のスキーヤーは道を挟んだ反対側の区画に駐車していて、その隣が扇沢駅から出てきた大ザックを背負った宮城ナンバーの登山者だった。そういえば駐車場の車や帰りにすれ違った車のうち1/3程度は県外ナンバーで、さすが観光地として有名な長野県だけあった。東北、関東、北陸、東海、関西、中国、四国、九州エリアのナンバーを見かけたのでまさに全国区。夏山シーズンになるともっと増えるだろう。柏原新道周辺の駐車場は満車で、スノーシェッドを一つ下った駐車余地も満車で、スノーシェッドをさらに一つ下った駐車余地にまで車があった。そして「らいちょう駐車場」前では扇沢方面へ上がる車のマイカー規制が行われており、マイカーはここに駐車してシャトルバスで扇沢に向かうようになっていた。扇沢の駐車場が満車なので当然の処置である。なお、この2日後はまだ扇沢の駐車場は満車になっていないようで規制は行われていなかった。

 

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